親権者指定の判断基準について

親権者指定の判断基準について

 親権者の指定においては、子の利益(福祉)を最優先して考慮されなければなりません。両親の子に対する愛情だけで判断するわけにはいかず、また、両親の愛情は同等であって、他人が決められるものでもありません。
 ただ、何が子の利益であるかの判断は容易ではなく、次のような事情の比較考量、総合判断によって決定されています。

現状尊重(継続性)の基準

 既に監護をしている親が引き続き監護していくべきだという基準です。監護者が突然変わると、子は住む場所も変わり、場合によっては学校を転校する必要もあるなど、子の精神的な負担は大きく、子の心理的不安定をもたらし、子のためにはなりません。父であるか母であるかを問わず、監護の実績や継続性は裁判実務では非常に重視されています。実際には、専業主婦はもちろん、共働きであっても、育児を婚姻中から主として母親が担うことが多いため、監護の継続性から、母を親権者または監護者とすることが多いと言えます。。
 ただし、違法な奪取で開始した監護については、監護の実績を積み重ねても評価されません。もっとも、よくある子をつれて妻が別居する場合は、違法な奪取と認定されることはまずなく、子を連れて出たほうが「勝ち」のような状況にあることは否めません。逆に子を連れずに一人で家を出る場合は、「負け」になることが多いと言えます。

乳幼児の母親優先の基準

 かつては、子が乳幼児の場合には、子の幼児期における生育には、母の愛情と監護が、父のそれにもまして不可欠であるからであるとして、他の事情を十分吟味することなく母親が優先されることがありました。
 現在では、子の養育における父母の役割は多様化しており、生物学的な母を基準とすることは必ずしも妥当ではありません。
 ですので、この基準をまったく無視するわけにはいきませんが、補完的なものと捉えておくべきです。

子の意思の尊重

 家事事件手続法65条では家庭裁判所に対して、子の年齢を限定せずに、子の陳述の聴取等適切な方法により、子の意思の把握に努め子の年齢および発達の程度に応じてその意思を考慮すべき義務を課しています。さらに、子が満15歳以上の場合は、家庭裁判所は、親権者、監護者の指定の審判や裁判、変更の審判をするときには、子の陳述を聴取する必要があります。
 ただ、子の意思の尊重とはいえ、結果的に子にどちらかの親を選ばせることになりますので(子は本心では両親に仲直りして夫婦で仲良くやっていってほしいと考えていることが多いと思います。)、非常に酷なことと個人的には思います。ただ、実務的にはある程度の年齢以上(10歳以上程度)では重要視されています。

きょうだいの不分離の基準

 きょうだいを分離せずに同一人によって監護させるべきとの考え方で、きょうだいを分離することは、父または母との別れに加え、きょうだいとの別れも子に経験させることになり酷であること、きょうだいで生活することは人格形成上の価値があること、などを理由としています。きょうだいといっても分離の状態で安定した生活を送っている場合もあり、また、年齢によっても状況は様々ですので、あくまで判断する際の事情の1つであり、絶対的なものではありません。

奪取の違法性

 監護の継続性との関係で、子を違法に奪取した後に、子がある程度安定した生活を送っている場合、どう評価するかという問題があります。たとえば、一方の監護中に無断で子を連れ去る、面会交流のために引渡しを受けた後に子を返さない、同居親に対して暴力をふるって実力で子を奪うなどの場合です。
 親権は、何より子の利益の観点から判断されなければなりませんが、違法な奪取の後、子が安定した生活を送っていても、監護の継続性という観点からはまったく評価されません。さもなくば、力尽くでも子を連れて行ったもの勝ちになってしまいますし、さらには、違法な奪取が繰りかえされるおそれもあり、子のためにはまったくならないからです。

その他あまり重視されないもの

 一方、一般的に考えれているほど重視されない事情もあります。まず、経済的能力はあまり重視されていません。もちろん、監護親に収入がなければ子も生活できませんが、祖父母の協力によって生活がなり立つ場合や最悪、生活保護受給であっても、今後の生活の見通しがたつ状況であれば、大丈夫です。
 また、不貞行為がある場合でも、不貞行為は夫婦間の問題であって、子の親権問題とは直結せず、不貞行為のために子の監護を放棄しているというような事情がなければ、親権適格にはまったくと言っていいほど影響しません。一般的には不倫するような親に親の資格はないと考えてしまいがちですが、この点を強く主張しても裁判所はほとんど関心をもってくれません。

では上記事情はどのようにして認定されるのでしょうか。

 親権をめぐる争いがある場合は、家庭裁判所の調査官調査が行われます。その調査の前に以下のような事項を含む陳述書の作成が求められます。必要に応じて資料を添付します。以下で「監護親」とは現状、子の養育している側の親になります。「非監護親」は養育していないほうの親です。

 

※陳述書に書くべき内容

監護親側
1 監護親の生活状況
(1)生活歴(学歴、職歴、病歴、家庭生活や社会生活における主な出来事等)
(2)職業、勤務先、勤務時間および仕事の内容等
(3)平日および休日の生活スケジュール
(4)健康状況
(5)同居家族とその状況(氏名、年齢、職業)
(6)住居の間取り<資料の添付>
2 経済状況
(1)収入<資料の添付:源泉徴収票、確定申告書など>
(2)特記事項
3 子の生活状況
(1)子の生活歴および監護状況(監護補助態勢も含みます。)<資料の添付>
(2)子の発育状況および健康状況<資料の添付:母子健康手帳など>
(3)子の通う保育園、幼稚園および小学校の名称、所在地、連絡先および連絡担当者の氏名等
(4)保育園、幼稚園および小学校への出欠状況<資料の添付:幼稚園および保育園の連絡帳、、通知票など>
(5)紛争に対する子の認識の程度
(6)非監護親との交流の程度
4 子の監護方針
(1)今後の監護方針
(2)親権者となった場合の監護状況の変更の有無およびその具体的内容
(3)親権者となった場合の非親権者と子の交流についての意向
5 その他参考となる事項

非監護親側
1 非監護親の生活状況
(1)生活歴(学歴、職歴、病歴、家庭生活や社会生活における主な出来事等)
(2)職業、勤務先、勤務時間および仕事の内容等
(3)平日および休日の生活スケジュール
(4)健康状況
(5)同居家族とその状況(氏名、年齢、職業)
(6)住居の間取り<資料の添付>
2 経済状況
(1)収入<資料の添付:源泉徴収票、確定申告書など>
(2)特記事項
3 子の生活状況
(1)子の生活歴および監護状況(監護補助態勢も含みます。)<資料の添付>
(2)子との交流の状況
4 子の監護方針
(1)今後の監護方針
(2)予定している監護環境および監護態勢
(3)監護補助者の有無およびその氏名、年齢、住所
(4)親権者となった場合の非親権者と子の交流についての意向

 

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