自己破産申立にあたって過払金がある場合の対応

自己破産申立にあたって過払金がある場合の対応

過払金の発生

 消費者金融等からの借入れのある個人が破産手続開始の申立てをするにあたっては、平成22年6月以前に取引がある場合は債権者から取り寄せた取引履歴を元に、利息制限法の制限利率により引き直し計算をして、法律上の正確な残高を算出することになります。引き直しの結果、債務がすでに完済になっており、さらに過払金が発生している場合もあります。
 平成22年6月の改正貸金業法の施行により、利息制限法違反での貸付ができなくなりましたので、これ以降に新規に消費者金融等から借入があっても利息制限法の制限利率による引き直しは不要ですし、過払金が発生することもありません。

過払金の回収の必要性

 過払金の他に財産がない場合で、過払金の回収見込額が100万円以上あり、同時廃止事件ではなく、管財事件になることが予想される場合に、過払金を申立代理人側で回収しておくほうがよいのか問題となります。
 調査の結果、過払金が多額にあることが判明した場合、かかる過払金は債務者の財産として破産財団を構成することになりますので、破産法上の原則では、過払金の回収は、破産財団の換価回収の一環として、破産管財人に任せることになります。したがって、申立代理人が過払金を回収せずに早期の破産申立を目指すことになります。 
 ただ、原則的には以上の通りですが、実務上は、過払金から申立のための弁護士費用や実費を支払うこともよくありますので、申立代理人が過払金を回収する必要性は否定できないところです。
 もっとも、過払金の回収見込額から弁護士費用や申立実費を差し引いて50万円を越えない場合は同時廃止事件と処理される見込みが高くなりますので、この場合は、申立代理人側で回収することについて問題は少ないといえます。

 

過払金の使い途

 さらに、債務者が回収した過払金を生活費として使ってよいかも問題となります。生活費として使うことは、有用の資に充てたとして、許容される余地はあります。ただ、貸金業者と和解してからも実際に回収するまでに時間がかかることが多く、生活費として使う場面はあまり多くなく、よっぽど生活に困窮している場合に限られるでしょう。また、過払金回収のためだけに、いたずらに破産手続開始の申立てを遅延させるべきではありませんので、回収後は速やかに破産申立てすべきです。
 破産手続開始の申立前に申立代理人において過払金を回収した場合、通常は、回収した過払金については、申立代理人が適切に管理したうえで、その使い途については明らかにしておく必要があります。

 

過払金の返還の和解

 任意交渉で消費者金融と和解する場合、早期解決のため、計算上の金額より減額して和解することも多く、さらに、支払い期日についても3か月先や6か月先という場合もあり得ます。管財事件になる見込みがある場合は、減額しての和解は、財産価値の毀損になりかねませんので、和解にあたっては返還金額について慎重に検討する必要があります。ただ、法律上の争点がある場合は、金額は必ずしも一義的でなく、どの程度減額に応じるかは難しいところです。債権者によっては、任意交渉よりも、訴訟の場合のほうが早く解決する場合もありますので、その場合は、速やかに訴訟提起するべきですし、訴訟提起後、第1回期日までに和解するケースもよくあります。

 

申立代理人が債権回収した裁判例

 申立代理人による回収行為については、過払金ではないですが「申立代理人弁護士による換価回収行為は、債権者にとって、それを行わなければ資産価値が急速に劣化したり債権回収が困難になるといった特段の事情がない限り、意味がないばかりか、かえって、財産価値の減少や隠匿の危険ないし疑いを生じさせる可能性があるのであるから、そのような事情がないにもかかわらず、申立代理人弁護士が換価回収行為をすることは相当でなく、換価回収行為は、原則として管財人が行うべきである。」と判示した裁判例もあるところですので、管財事件になることが見込まれる場合は、過払金の回収にあたっては、申立代理人による回収の必要性について慎重に判断すべきといえます。また、何らかの事情によって、過払金の大幅な減免を要する場合は、本来的には、早期に破産手続開始の申立てをして、回収については管財人に委ねるべきであると言えます。ただ、過払金を破産申立のための弁護士費用や実費にあてる場合も実務的には多くありますので、ケースバイケースで判断していくことになります。

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