成年後見等申立

成年後見申立のご相談

成年後見申立が必要な場合

親の認知症がだいぶ進んできたが、成年後見の申立をするべきなのかどうかという相談はよくあります。
成年後見制度は、裁判所によって選任された成年後見人が被後見人に代わって財産管理をするとともに、被後見人の身上監護を行うという制度です。裁判所から成年後見人に選任されると法的に本人の法定代理人として活動しますが、申立をせずに、事実上、親族が本人に代わって財産管理をしていることもよくあります。また、老人施設の契約などでも親族が本人に代わって行っている場合もあるかと思いますが、本人の認知症が進んでいて契約締結するだけの判断能力を欠いている場合は、契約が無効になることも考えられますし、そのリスクを避けるために老人施設から契約を拒否されることもありえます。

どのような場合に申立てが必要か、後見開始審判を申し立てるメリット・デメリット等につきましてて、初回30分無料で弁護士が具体的なケースに沿ってご説明させて頂きます。また、申立にあたって被後見人(本人)との面談が必要であれば、ご自宅や施設まで弁護士が訪問致します。

親族間でもめている場合はどうするのか?

成年後見申立の動機として、親族間の紛争が根底にある場合があります。親族間で調整がつかない場合などのケースにつきましても、弁護士が親族間の調整ができるように丁寧に対応致します。また、被後見人が特定親族から虐待(身体的虐待だけでなく、年金を取り上げるなどの経済的虐待もあります。)を受けているようなケースにつきましてもご相談をお受けします。なお、親族間で紛争がある場合は、公平の観点から、申立人が後見人候補者として申立書に記載した者ではなく、弁護士などの第三者の後見人が選任される可能性が高くなります。

申し立ててから取り下げできるのか?

成年後見制度は本人(被後見人)を保護するための制度です。一旦、裁判所に後見開始審判の申立をしたけれども、やっぱり取り下げたいという場合でも、本人保護の観点から簡単には取り下げができません(取り下げの理由と裁判所の許可が必要です)。ですので、申立にあたってはその必要性について、慎重に検討する必要があります。

また、たとえば、自分の兄弟が親の成年後見を申し立てた場合、後見申立が気に入らないからと言ってこれを法律的に止めさせることはできないです。第3者が無理矢理取り下げさせることはできないのです。この場合でも、親族の意見は聞かれますが、本人が精神的能力を欠いていて、本人にとって必要であれば、裁判所によって後見開始審判が下されることになります。

■後見(保佐・補助)開始の審判申立のための弁護士費用

後見開始の審判申立

220,000円(税込)

■実費

弁護士費用以外に必要な実費としては以下のものがあります。

  • 印紙代 800円~2,400円
  • 郵便切手代 約5,000円
  • 鑑定費用 30,000円~100,000円(ただし、診断書だけで足り、不要な場合も多いです)
  • 戸籍謄本、住民票、登記事項証明書等で5,000円程度

■成年後見等開始審判までに必要な期間

申立準備に1か月、申立から審判までで最短でも2~3か月程度はかかりますので、ご依頼頂いてから最短でも審判まで3か月程度の期間は必要となります。
親族が財産を使い込んでいるなど、財産の散逸の危険があり、3か月も待てない、早急に対応する必要があるような場合は、審判前の保全処分(財産の管理者の選任等の審判、後見命令・保佐命令・補助命令等の審判)という手続もあります。この手続きの詳細については弁護士にご相談下さい。

■成年後見人等候補者について

申立代理人の弁護士が成年後見人候補者になることも可能な場合がありますのでご相談下さい。

成年後見等の制度

①成年後見

認知症や知的障害などの精神障害があるために、不動産や預貯金などの財産を管理したり、介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりすることが困難な場合があります。自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約させられてしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方を保護し、支援するのが成年後見制度です。
成年後見は、判断能力がほとんどない方が対象となります。判断能力の有無については、申立書に添付する診断書によって判断されます。診断書の記載上から明らかに判断能力を欠いている場合は、鑑定がされることは通常ありません。財産管理については、審判確定後は成年後見人が代理して行うことになります。親族後見人の場合は、身上監護(身の回りの世話)も行います。

②保佐

保佐は、精神障害により、判断能力が著しく不十分な方を保護・支援するための制度です。成年後見と保佐の開始要件の違いは、本人の判断能力の違いになります。保佐の審判が開始されると、不動産を売買する、お金を借りるなどといった法律で定められた一定の重要な行為について、保佐人の同意が必要になります。保佐人の同意を得ていない行為については、本人または保佐人が取り消すことができます。ただし、日用品の購入など「日常生活に関する行為」については、保佐人の同意は必要なく、取消しの対象にもなりません。また、家庭裁判所の審判によって、特定の法律行為について保佐人に代理権を与えることもできます。

③補助

軽度の精神障害により、判断能力の不十分な方を保護・支援するための制度です。家庭裁判所の審判によって、特定の法律行為について、補助人に同意権・取消権や代理権を与えることができます。ただし、日用品の購入など「日常生活に関する行為」については、補助人の同意は必要なく、取消しの対象にもなりません。

成年後見等の手続きの流れ

成年後見等開始審判の申立手続きの流れについて以下でご説明致します。

①家庭裁判所への申し立て

後見等開始審判を申し立てることができるのは、本人、本人の配偶者、本人の四親等内の親族、市区町村長です。四親等内の親族には、本人の両親、祖父母、子、孫、兄弟姉妹、甥姪、いとこなどが含まれます。申し立てをする裁判所は、被後見人の住所地の裁判所(住民票の所在地とは限りません)です。例えば、被後見人が大阪市にお住まいであれば大阪家庭裁判所に申立をします。なお、申立を弁護士に依頼した場合の弁護士費用は依頼者負担となり、被後見人本人の負担とすることはできません。
申立てに必要な書類、添付書類を揃え、必要事項を記入して家庭裁判所に提出します。即日調査がなされる場合は、申立日時を予約します。弁護士に依頼された場合は、申立代理人として弁護士が申立を行うことになります。

②家庭裁判所の調査官による事実の調査

家庭裁判所調査官は、申立ての動機、本人に関する事項、成年後見人(保佐人、補助人)候補者に関する事項、関係者の意向、後見監督(保佐監督、補助監督)に関する留意事項、鑑定人候補者についての調査をします。具体的には、申立人、本人、成年後見人候補者が家庭裁判所に呼ばれ、事情を聞かれます。また、追加の資料の提出を求められることもあります。実際には参与員が調査官に代わって事情を聞くことが多いです。弁護士に申立を依頼した場合は、申立代理人として同席します。

③精神鑑定の実施 

申立てから審判までの期間は、3か月以内のことが多く、大半は6か月以内で審判に至っているようです。
家庭裁判所は、後見(保佐)開始の審判をするためには、明らかにその必要がないと認められる場合を除いて、本人の精神の状況について医師その他適当なものに鑑定をさせます(原則はこの通りですが、むしろ鑑定されない場合のほうが多数です。)。「鑑定についてのおたずね」を提出しておくと、手続が円滑に進みます。なお、補助開始の審判をするためには、鑑定を行うことが要件となっておらず、申立書に添付された診断書があれば足りることになります。なお、鑑定費用は3万円から10万円程度です。

④成年後見等開始審判

精神鑑定を踏まえて、本人が精神障害によって事理を弁識する能力を欠く常況にあると判断されれば、後見開始の審判が下されることになります。
申立書に記載した成年後見人・保佐人・補助人候補者が選任されることが多いですが、親族間に紛争性がある場合などは、家庭裁判所の判断により、弁護士や司法書士などの専門的知識を有する者が選任されることもあります。なお、申立書に弁護士などの専門家を候補者として記載することもできます。

⑤審判の告知と通知

申立人、本人はそれぞれ裁判所から審判書謄本を受け取ることになります。

⑥審判の確定と成年後見開始

告知後2週間経過で審判が確定し、審判確定後、法定後見が開始されます。
後見人の選任については、裁判所の判断により、申立書に候補者として記載した者ではなく、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職後見人が選任されることもあります。この場合は、申立人が所持している被後見人の財産関係の資料(通帳や不動産のいわゆる権利証など)や現金を専門職後見人に引き継ぐ必要があります。後見人のほうで、財産目録を作成する必要があることから、この引継ぎは早急に行う必要があります。また、引継ぎに際しては通常、申立人と専門職後見人とが今後のことについて打ち合わせします。申立代理人の弁護士もこの打ち合わせに同席することになります。

任意後見契約について

これは、現在は、十分な判断能力がある方が、将来的に判断能力が不十分になった場合にそなえて、あらかじめ公正証書で任意後見人となる弁護士と任意後見契約を結んでおき、判断能力が不十分になったときに、その契約にもとづいて任意後見人が本人を援助する制度です。
成年後見などの法定後見制度とは異なり、誰を任意後見人にするかは、依頼者が自己決定権に基づいて自由に決めることができます。これは、判断能力があるうちに任意後見契約をするのですから当然のことです。成年後見の場合は申立が必要なときには、本人の判断能力がなくなっていますので、基本的には自分の意思で誰を後見人にするかは決めることができません。
また、任意後見人の報酬についても裁判所が決めるのではなく、任意後見契約の中で合意します。任意後見契約は、家庭裁判所が「任意後見監督人選任の審判」をしたときから、その効力が生じます。
任意後見契約の弁護士費用につきましては、管理すべき業務の種類や財産の多寡によって異なりますので、個別にご相談下さい。