債権回収・強制執行

弁護士による債権回収の方法について

弁護士が関与する債権回収の方法について、相手方から任意の支払いが期待できる場合と期待できない場合とに分けて以下でご説明致します。事前の交渉で相手方に支払い意思がまったくないよう場合であってもいきなり裁判をすることはなく、通常は内容証明郵便の送付からスタートします。なぜ内容証明郵便で送るのかは以下でご説明いたします。

当事務所では債権回収に関する法律相談は、個人、事業者を問わず、1時間5,000円(税込)となっていますので、お気軽にご相談下さい。

請求内容に争いがない場合の債権回収

1)内容証明郵便による催促・督促

弁護士名を入れた配達証明付内容証明郵便による督促状を相手に送付します。内容証明郵便で送ることの意味は、相手に送った督促状を後日の裁判で証拠として利用するためですが、受け取った相手は、支払いをしなければ、後日、裁判を起こされることを想定します。そこで、評判や世間体を気にする相手や手続のわずらわしさを嫌う相手であれば、裁判はなるべく避けたいと考えますので、弁護士名入りの内容証明郵便を送ることで任意の支払い、債権回収が期待できます。なお、内容証明郵便の受取を拒否する債務者に対しては同内容のものを特定記録郵便で送付します。

督促状の内容については、できるだけ穏便に支払いを促す内容にすることも、何日以内に支払いがなければ訴訟提起するといった強行な内容まで、柔軟な対応が可能です。今後も関係が続くようであれば、できる限り丁寧な文面で作成致します。
督促状送付後に、弁護士が相手と交渉を進めます。相手と合意が成立すれば、合意書を作成します。

相手から分割払いの提案があり、それを受け入れる場合は、合意書は公正証書で作成します。公正証書を作成しておけば、相手に分割払いの約定を破られたときでもすぐに強制執行手続きに移行することができます。相手の債務の内容、種類によっては公正証書ではなく、簡易裁判所の訴え提起前の和解という方法を取ることもあります。

内容証明郵便による催促・督促

2)支払督促手続

支払督促手続は、管轄の簡易裁判所の書記官に対して支払督促を申し立てることによって開始します。書類だけで審理され、当事者が裁判所に出頭する必要もありませんので、当事者同士が裁判所で会うといったこともありません。

請求に理由がないことが明らかな場合を除き、支払督促が発せられることになります。そして、一定期間内に相手から異議の申立がなければ、確定判決と同様の効力をもつに至りますが、相手から異議の申立があれば、通常訴訟に移行することになります。
債権回収の手続として簡易で強力な効力が得られる反面、相手に争う意思がある場合は、あまり役に立たないとも言えます。

支払督促手続

3)民事調停手続

民事調停は簡易裁判所での調停委員会の仲介のもとで話し合いでの紛争解決を図るものです。相手に話し合いで解決したいという気持ちがあり、当事者双方の関係から裁判を避けたいというような場合には非常に便利な手続きです。分割払いを認める代わりに保証人を立てさせたり、担保を供させたりといった柔軟な解決が可能といったメリットがあります。ただ、 相手に話し合う気持ちがなく、裁判所に出頭することが期待出来ないような場合はほとんど意味がありません。また、債権回収を早くしたい場合などは、本手続きは即効性はなく、解決までに時間が掛かることはデメリットとなります。

調停が成立した場合に作成される調停調書は、確定判決と同様の効力があり、支払いが滞るような場合には、これに基づいて、直ちに強制執行することができます。

任意の支払いが期待できない場合の債権回収

1)財産開示手続の利用

財産開示手続は、債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続であり、債務者が財産開示期日に裁判所に出頭し、債務者の財産状況を陳述する手続となります。債務者が任意に債務を支払わない場合に強制執行の準備のために債務者の財産を把握する必要があります。

財産開示手続は、強制執行の実効性を確保する目的で平成15年の民事執行法改正により創設されましたたが、実効性が十分でなくあまり活用されてきませんでした。
そこで、2020年4月の改正により、財産開示手続の申立権者の範囲を拡大する(債務名義が仮執行宣言付判決、公正証書、支払督促も含まれるようになりました)とともに、開示義務者(債務者等)の手続違反に対する罰則を強化することにより財産開示手続の実効性の強化が図られました。
この結果、公正証書により養育費の支払を取り決めた者も支払義務者に対し財産開示制度を利用できるようになりました。
罰則については、債務者が出頭や陳述を拒む場合や虚偽の陳述をした場合の制裁は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰に強化されました。

申立ての要件としては、強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6箇月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得ることができなかったこと(民事執行法197条1項1号及び2項1号)あるいは、知れている財産に対する強制執行(担保権の実行)を実施しても、申立人が当該金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得られないこと(民事執行法197条1項2号及び2項2号)を主張、立証する必要があります。
強制執行の準備のために財産開示手続を利用することが多いでしょうから、通常は後者の要件を主張することが多いでしょう。この場合、裁判所所定の書式「財産調査結果報告書」に記載される資料の提出をすることになります。

財産調査結果報告書 ※リンク先は大阪地方裁判所のページです。

2)仮差押手続による債権回収

相手がどうしても債務を履行しない場合は、訴訟を提起することになりますが、訴訟が確定するまでには一定の時間を要します。それまでの間に、相手がその所有する財産を第三者に売却・処分したり、他の債権者に先に差押えされたりする可能性があります。
そこで、相手が財産を処分してしまう可能性がある場合に、本案訴訟が確定するまでの間、相手の財産を確保するための手段として用いられるのが仮差押という手続きです。対象となるのは、相手名義の不動産や預金などが考えられます。

この方法は、あくまでも本案訴訟で決着がつくまでの間、財産を保全するという仮のものですが、不動産や預金に仮差押を受けることで相手の経済的信用に傷がつくことになりますので、それを回避するために、申立の取り下げを求めて、相手が任意的支払いに応じてくることは十分にありえます。このように仮差押の段階で債権回収ができる場合もあります。
仮差押ができれば、本案訴訟提起後、確定判決を得たあとに、仮差押にかかる財産に対してそのまま強制執行することができます。

3)訴訟手続による債権回収

交渉が物別れに終わり、相手から任意の支払いが期待できない場合の最終手段として訴訟提起を選択することになります。
調停とは違い、相手が裁判所に出頭せず、答弁書も出さなければ、相手はこちらの言い分をすべて認めたことになり、こちらが訴状で請求している内容通りの判決が下されることになりま す。また、訴訟手続においても裁判所から和解を勧められることもあり、お互い譲歩の上で和解が成立する場合もあります。

確定判決または和解調書に基づいて相手の財産に対して強制執行することが可能となります。判決が出た段階では相手方からの任意の支払いが期待できる場合が多く、相手方にある程度の資力がある場合は、この段階で債権回収をすることができます。

弁護士に依頼して強制的に債権回収する手段

判決が確定しても相手方が支払いをしない場合の債権回収の方法は、強制執行になります。強制執行には、大きく分けて、不動産執行、債権執行及び動産執行があります。
強制執行にするにあたっては、相手の財産状況の調査が必要となってきます。執行可能な財産としては、不動産、動産、預貯金、株式・投資信託、給与債権、売掛金、自動車、ゴルフ会員権などが考えられます。これらの財産の有無、価値、その所在などを調査します。

1)不動産執行について

不動産の調査に関しては相手の住所、本店・支店所在地等の地番を調べて当該不動産の登記事項証明書の交付を受けるところから始めることになります。自然人であれば、前住所があればそこに不動産を所持している可能性もありますので、同所の登記事項証明書を取り寄せたり、会社であれば、取引先や同業者などからも事情を聞いて本店、支店以外に工場や営業所を有していないかどうかを調べます。

2)債権執行について

相手の銀行預金を差押えする場合は、取扱支店を特定して申し立てる必要があります。債務名義を取得している場合は、情報取得手続や弁護士照会を通じて預金口座を調べることも可能です。
また、相手が取引先に売掛金を持っている場合、その債権を差し押さえることも可能です。ただ、この場合については対象債権の特定が必要なため、第三債務者が協力してくれるかどうか、相手の取引の実情をどこまで把握できるかが重要となってきます。

3)動産執行について

自然人の場合は日常生活に必要な財産のほとんどが差押禁止財産に該当することと、仮に現金が見つかったとしても66万円以下の現金についても差押禁止財産になっており、執行不能となることが多いと思われます。

法人の場合は、差押禁止財産はありませんので、事務所、営業所などで現金が見つかればそのまま差押えができます。ただ、事務用品などは換価価値がないものがほとんどですので、そこからの回収はほとんど期待できません。現金を差し押さえるためには、当該事業所に現金が置かれている可能性が高い時期を狙って執行することが重要になってきます。また、営業に必要な動産の差押えができれば、相手の事業に与える影響が大きく、相手が差押えの解除を求めてくることも考えられ、それを機会に任意の弁済を促すことが可能です。

4)預貯金の有無に関する調査について

・弁護士照会制度の利用
弁護士会照会制度は、弁護士が所属する弁護士会に対して、照会申し出を行い、弁護士会を通じて各照会先に対して、照会内容について回答するよう求めるものです。
現在、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行をはじめ、全国各地の地域金融機関、ゆうちょ銀行において、いわゆる全店照会ができるようになっています。
全店照会とは、有効な債務名義(確定判決、調停調書、和解調書など。ただし、公正証書によるものは除かれます。)があれば、その債務名義に表示された「債務者」(債務名義には被告や相手方などと表示されています)の口座に関して支店名・口座科目・口座毎の預金残高の回答を求める弁護士照会をした場合、金融機関において、当該債務者(預金者)の同意を得ることなく、速やかに回答するという取扱いです。
この場合でも、金銭債権についての債務名義が必要ですので先に判決などを取得しておく必要があります。

・裁判所を通じた預貯金者の情報取得手続の利用
金銭債権についての債務名義(仮執行宣言付判決、執行証書等を含む。)または一般の先取得権を有していれば、いわゆる不奏功等要件の下、裁判所を通じて銀行等から債務者の預貯金がある支店名、預貯金の種別、口座番号及び額の情報提供を受けることができます。
預貯金債権については、不動産及び給与債権に係る情報の取得手続と異なり、事前に財産開示手続が行われていることは要件とされていません。また、給与債権に係る情報の取得手続と異なり、請求債権が扶養料債権など(民執法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る債権)または生命身体侵害損害賠償債権という限定はされていませんので、金銭債権であれば利用が可能です。
債務名義が必要なことは弁護士照会と同様ですが、執行認諾文言付きの公正証書(執行証書)でも利用可能です。

債権回収に関する弁護士費用(消費税別途)

1.内容証明郵便による督促状の作成及び送付

30,000円
※弁護士名入りですが、交渉費用は含みません。

2.示談交渉

・示談交渉着手金※債権の内容に争いがない場合
100,000円
ただし、金額や履行期など債権の内容に争いがある場合は、この限りではありません。
・示談交渉報酬金
回収した金額の10%(ただし、300万円以下の部分は16%になります。)

3.仮差押

・着手金 200,000円
 仮差押の手続とその後の相手方との交渉の費用を含みます。
・成功報酬金 100,000円
・仮差押後の交渉で回収できた場合は回収額の10%(ただし、300万円以下の部分は16%になります。)が報酬金となります。

4.訴訟提起

・着手金 請求金額の8%~ 最低額は200,000円
・報酬金 回収した金額の10%(ただし、300万円以下の部分は16%になります。)

5.強制執行

・着手金 申立て1件につき100,000円(ただし、預金差押につきましては、1回あたり50,000円)
・報酬金 回収金額の10%(ただし、300万円以下の部分は16%になります。)
※判決確定後に債務者から任意の支払いが得られなかった場合にのみ強制執行しますので、訴訟報酬金との2重取になるわけではありません。

6.実費

裁判手続を取る場合は、収入印紙代や郵便切手代が別途掛かります。仮差押の場合は、供託金(事案毎に異なる額です)を積む必要があります。また、不動産に強制執行する場合は、裁判所への予納金(60万円~、大阪地裁の場合は90万円)が必要になってきます。