任意後見契約公正証書(ひな形)

 任意後見契約公正証書のひな形です。出典「新版成年後見人の実務(追補版)」大阪弁護士会高齢者・障害者総合支援センター編集 

 なお、あくまでひな形の提供であり、このままの形での利用を当事務所が推奨するものではありませんので、使用にあたっては十分にご注意下さい。

任意後見契約公正証書

 本公証人は、委任者●●(以下「甲」という。)及び受任者●●(以下「乙」という。)の嘱託により、次の法律行為に関する陳述の趣旨を録取し、この公正証書を作成する。

第1条(契約の趣旨)
  甲は乙に対し、平成●年●月●日、任意後見契約に関する法律に基づき、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における甲の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務(以下「後見事務」という。)を委任し、乙はこれを受任する。

第2条(契約の発効)
1 前条の任意後見契約(以下「本契約」という。)は、任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる。
2 本契約締結後、甲が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況になり、乙が本契約による後見事務を行うことを相当と認めたときは、乙は、家庭裁判所に対し任意後見監督人の選任の請求をする。
3 本契約の効力発生後における甲と乙との間の法律関係については、任意後見契約に関する法律及び本契約に定めるもののほか、民法の規定に従う。

第3条(後見事務の範囲)
  甲は、乙に対し、別紙「代理権目録(任意後見契約)」記載の後見事務(以下「本件後見事務」という。)を委任し、その事務処理のための代理権を付与する。

第4条(身上配慮の責務)
  乙は、本件後見事務を処理するに当たっては、甲の意思を尊重し、かつ、甲の身上に配慮するものとし、その事務処理のため、適宜甲と面接し、ヘルパーその他日常生活援助者から甲の生活状況につき報告を求め、主治医その他医療関係者から甲の心身の状態につき説明を受けることなどにより、甲の生活状況及び健康状態の把握に努めるものとする。

第5条(証書等の保管等)
1 乙は、甲から本件後見事務処理のために必要な次の証書等及びこれらに準ずるものの引渡しを受けたときは、甲に対し、その明細及び保管方法を記載した預り証を交付する。
  ①登記済権利証、②実印・銀行員、③印鑑登録カード・住民基本台帳カード、④預貯金通帳、⑤各種キャッシュカード、⑥有価証券・その預り証、⑦年金関係書類、⑧土地・建物賃貸借契約書等の重要な契約書類
2 乙は、本契約の効力発生後甲以外の者が前項記載の証書等を占有所持しているときは、その者からこれらの証書等の引渡しを受けて、自らこれを保管することができる。
3 乙は、本件後見事務を処理するために必要な範囲で前記の証書等を使用するほか、甲宛の郵便物その他の通信を受領し、本件後見事務に関連すると思われるものを開封することができる。

第6条(費用の負担)
  乙が本件後見事務を処理するために必要な費用は、甲の負担とし、乙は、その管理する甲の財産からこれを支出することができる。

第7条(報酬)
[報酬額の定めがある場合]
1 甲は、本契約の効力発生後、乙に対し、本件後見事務処理に対する報酬として毎月末日限り金●●円を支払うものとし、乙は、その管理する甲の財産からその支払を受けることができる。
2 前項の報酬額が次の事由により不相当となった場合には、甲及び乙は、任意後見監督人と協議のうえ、これを変更することができる。
(1)甲の生活状況又は健康状態の変化
(2)経済情勢の変動
(3)その他現行報酬額を不相当とする特段の事情の発生
3 前項の場合において、甲がその意思を表示することができない状況にあるときは、乙は、任意後見監督人の書面による同意を得てこれを変更することができる。
4 第2項の変更契約は、公正証書によってしなければならない。
5 後見事務処理が、不動産の売却処分、訴訟行為、その他通常の財産管理事務の範囲を超えた場合には、甲は乙に対し毎月の報酬とは別に報酬を支払う。この場合の報酬額は、甲と乙が任意後見監督人と協議の上これを定める。甲がその意思を表示することができないときは、乙は任意後見監督人の書面による同意を得てこれを決定することができる。
[無報酬の場合]
1 乙の本件後見事務処理は、無報酬とする。
2 本件後見事務処理を無報酬とすることが、次の事由により不相当となった場合には、甲及び乙は、任意後見監督人と協議のうえ、報酬を定めることができる。
(1)甲の生活状況又は健康状態の変化
(2)経済情勢の変動
(3)その他本件後見事務処理を無報酬とすることを不相当とする特段の事情の発生
3 (報酬額の定めがある場合の第3項に同じ)
4 (報酬額の定めがある場合の第4項に同じ)

第8条(報告)
1 乙は、任意後見監督人に対し、3か月ごとに、本件後見事務に関する次の事項について書面で報告する。
(1)乙の管理する甲の財産の管理状況
(2)甲を代理して取得した財産の内容、取得の時期・理由・相手方及び甲を代理して処分した財産の内容、処分の時期・理由・相手方
(3)甲を代理して受領した金銭及び支払った金銭の状況
(4)甲の身上監護につき行った措置
(5)費用の支出及び支出した時期・理由・相手方
(6)報酬の定めがある場合の報酬の収受
2 乙は、任意後見監督人の請求があるときは、いつでも速やかにその求められた事項につき報告する。

第9条(契約の解除)
1 甲又は乙は、任意後見監督人が選任されるまでの間は、いつでも公証人の認証を受けた書面によって、本契約を解除することができる。
2 甲又は乙は、任意後見監督人が選任された後は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、本契約を解除することができる。

第10条(契約の終了)
1 本契約は、次の場合に終了する。
(1)甲又は乙が死亡し又は破産手続開始決定を受けたとき
(2)乙が後見開始の審判を受けたとき
(3)乙が任意後見人を解任されたとき
(4)甲が任意後見監督人選任後に法定後見(後見・保佐・補助)開始の審判を受けたとき
(5)本契約が解除されたとき
2 任意後見監督人が選任された後に前項各号の事由が生じた場合、甲又は乙は、速やかにその旨を任意後見監督人に通知するものとする。
3 任意後見監督人が選任された後に第1項各号の事由が生じた場合、甲又は乙は、速やかに任意後見契約の終了の登記を申請しなければならない。

  以上

 

 

別紙

代 理 権 目 録

A 財産の管理・保存・処分等に関する事項
 A1□ 甲に帰属する別紙「財産目録」記載の財産及び本契約締結後に甲に帰属する財産(預貯金[B1・B2]を除く。)並びにその果実の管理・保存
 A2□ 上記の財産(増加財産を含む。)及びその果実の処分・変更
□売却
□賃貸借契約の締結・変更・解除
□担保権の設定契約の締結・変更・解除
□その他(別紙「財産の管理・保存・処分等目録」記載のとおり)
B 金融機関との取引に関する事項
B1□ 甲に帰属する別紙「預貯金等目録」記載の預貯金に関する取引(預貯金の管理、振込依頼・払戻し、口座の変更・解約等。以下同じ。)
B2□ 預貯金口座の開設及び当該預貯金に関する取引
B3□ 貸金庫取引
B4□ 保護預り取引
B5□ 金融機関とのその他の取引
□当座勘定取引
□融資取引
□保証取引
□担保提供取引
□証券取引[国債、公共債、金融債、社債、投資信託等]
□為替取引
□信託取引(予定(予想)配当率を付した金銭信託(貸付信託)を含む。)
□その他(別紙「金融機関との取引目録」記載のとおり)
 B6□ 金融機関とのすべての取引
C 定期的な収入の受領及び費用の支払に関する事項
 C1□ 定期的な収入の受領及びこれに関する諸手続
□家賃・地代
□年金・障害手当金その他の社会保障給付
□その他(別紙「定期的な収入の受領等目録」記載のとおり)
 C2□ 定期的な支出を要する費用の支払及びこれに関する諸手続
□家賃・地代
□公共料金
□保険料
□ローンの返済金
□その他(別紙「定期的な支出を要する費用の支払等目録」記載のとおり)
D 生活に必要な送金及び物品の購入等に関する事項
 D1□ 生活費の送金
 D2□ 日用品の購入その他日常生活に関する取引
 D3□ 日用品以外の生活に必要な機器・物品の購入
E 相続に関する事項
 E1□ 遺産分割又は相続の承認・放棄
 E2□ 贈与若しくは遺贈の拒絶又は負担付の贈与若しくは遺贈の受諾
 E3□ 寄与分を定める申立て
 E4□ 遺留分減殺の請求
F 保険に関する事項
 F1□ 保険契約の締結・変更・解除
 F2□ 保険金の受領
G 証書等の保管及び各種の手続に関する事項
 G1□ 次に掲げるものその他これらに準ずるものの保管及び事項処理に必要な範囲内の使用
□登記済権利証
□実印・銀行員・印鑑登録カード
□その他(別紙「証書等の保管等目録」記載のとおり)
 G2□ 株券等の保護預り取引に関する事項
 G3□ 登記の申請
 G4□ 供託の申請
 G5□ 住民票、戸籍謄抄本、登記事項証明書その他の行政機関の発行する証明書の請求
 G6□ 税金の申告・納付
H 介護契約その他の福祉サービス利用契約等に関する事項
 H1□ 介護契約(介護保険制度における介護サービスの利用契約、ヘルパー・家事援助者等の派遣契約等を含む。)の締結・変更・解除及び費用の支払
 H2□ 要介護認定の申請及び認定に関する承認又は異議申立て
 H3□ 介護契約以外の福祉サービスの利用契約の締結・変更・解除及び費用の支払
 H4□ 福祉関係施設への入所に関する契約(有料老人ホームの入居契約等を含む。)の締結・変更・解除及び費用の支払
 H5□ 福祉関係の措置(施設入所措置等を含む。)の申請及び決定に関する異議申立て
I 住居に関する事項
 I1□ 居住用不動産の購入
 I2□ 居住用不動産の処分
 I3□ 借地契約の締結・変更・解除
 I4□ 借家契約の締結・変更・解除
 I5□ 住居等の新築・増改築・修繕に関する請負契約の締結・変更・解除
J 医療に関する事項
 J1□ 医療契約の締結・変更・解除及び費用の支払
 J2□ 病院への入院に関する契約の締結・変更・解除及び費用の支払
K□ A~J以外のその他の事項(別紙「その他の委任事項目録」記載のとおり)
L 以上の各事項に関して生ずる紛争の処理に関する事項
 L1□ 裁判外の和解(示談)
 L2□ 仲裁契約
 L3□ 行政機関等に対する不服申立て及びその手続の追行
 L4・1 任意後見受任者が弁護士である場合における次の事項
  L4・1・1□ 訴訟行為(訴訟の提起、調停若しくは保全処分の申立て又はこれらの手続の追行、応訴等)
  L4・1・2□ 民事訴訟法第55条第2項の特別授権事項(反訴の提起、訴えの取下げ・裁判上の和解・請求の放棄・認諾、控訴・上告、復代理人の選任等)
 L4・2□ 任意後見受任者が弁護士に対して訴訟行為及び民事訴訟法第55条第2項の特別授権事項について授権をすること
 L5□ 紛争の処理に関するその他の事項(別紙「紛争の処理等目録」記載のとおり)
M 復代理人・事務代行者に関する事項
 M1□ 復代理人の選任
 M2□ 事務代行者の指定
N 以上の各事務に関連する事項
 N1□ 以上の各事項の処理に必要な費用の支払
 N2□ 以上の各事項に関連する一切の事項

以上

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この記事を書いた人

弁護士多田大介

代表弁護士 多田 大介

依頼者との信頼関係を第一に考え、信頼関係に基づき、迅速なサービスを提供致します。おかげさまで大阪弁護士会に弁護士登録して今年で17年目です。趣味はSFやホラーなどの海外ドラマを見たり、歴史の本を読むことです。
代表弁護士 多田大介(登録番号31516)