後見人を解任したい、後見人を辞任したいという相談

後見人の辞任と解任

 後見人を辞任したい、後見人を解任したいという相談を受けることがありますが、結論としては辞任・解任ともに家庭裁判所の判断が必要であり、その要件は厳しいといえます。特に解任についてですが、職業後見人(弁護士、司法書士や社会福祉士)と本人(被後見人)またはその親族との関係がよくない、後見人の態度が横柄で親族が後見人のことが気に入らないなどといった理由での解任は認められません。

後見人自らが辞任したい場合

 後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができます(844条、家事法39条・別表第1の4の項・72の項)。ただし、後見には、公共的意義がありますので、いったん就職した後見人が、みだりに辞任することは許されません。正当な事由としては、後見人の病気や高齢、遠隔地への転居などで職務を全うできないなどが考えられます。正当な事由があるかどうかについては、裁判所が判断します。もっとも、やる気のない後見人をいつまでそのままにしておいたのでは、本人の財産管理や身上介護にも支障を来す場合がありますので、本人のためを考えると、後見人の辞任を認めて新しい後見人を選任する必要性がある場合は多いでしょう。この意味では、親族で後見人になる場合は、後見人の職務について勉強し、後見人になった場合は何をしなくてはいけないかを十分に理解した上で、引き受けるべきと言えます。
 なお、実務においては、後見人の不在の期間を短くするために、後見人の辞任申立てと同時に新たな後見人の選任を申し立てることになります。

後見人を解任したい場合

 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求によって、または職権に基づいて、家庭裁判所がこれを解任することができます。(846条、家事法39条、別表第1の5の項・73の項)。
 具体的には後見人が被後見人の財産を不正に流用したり、裁判所に提出すべき書類を作成または提出しなかったり、身上監護を完全に放棄したりする場合が考えられます。
 関係人の申立てによる場合は、上記事由について、裁判所の審判を得る必要があります。
 また、後見人による被後見人財産の流用などの不正行為が発覚したときは、裁判所が職権で後見人を解任することがあります。
 後見人の解任により、家庭裁判所は、被後見人、その親族その他利害関係人の請求または職権により新たな後見人を選任することになります。

運用の変更

 成年後見を巡っては「全く知らない専門職が選ばれ、ほとんど会いに来ないのに報酬を支払っている。代えてほしいが認められない」といった声もあったようで、平成31年1月には最高裁判所が各家庭裁判所に対して、この点に関する運用の見直しを通知したようです。今後は後見人が利用者の生活状況に合っているか家裁が定期的に見直し、必要に応じて支援内容を改善するよう指導し、改まらない場合は辞任を勧告するなどして、交代や追加の選任をしやすくするとのことです。

 以前は上記のとおり、解任や辞任は厳しく制限されていましたが、最高裁判所の各家庭裁判所への通知により、今後はもう少し柔軟な運用がなされるようです。これにより、専門職後見人が辞任しやすい方向にはなると思われますが、条文が改正されたわけではありませんので、どのような場合に辞任が可能かは今後の判断の集積をまつことになるでしょう。

この記事を書いた人

弁護士多田大介

代表弁護士 多田 大介

依頼者との信頼関係を第一に考え、信頼関係に基づき、迅速なサービスを提供致します。おかげさまで大阪弁護士会に弁護士登録して今年で17年目です。趣味はSFやホラーなどの海外ドラマを見たり、歴史の本を読むことです。
代表弁護士 多田大介(登録番号31516)