■離婚による復氏と戸籍との関係
離婚する場合、婚姻によって氏を改めた配偶者は、法律上当然に婚姻前の氏に戻ることになります。その際、戸籍については、原則として婚姻前の戸籍(親の戸籍)に入籍することになります。しかし、婚姻前の戸籍が除籍されている場合(例えば、父母ともに死亡している場合)は、婚姻前の戸籍に戻ることができませんので、新たに戸籍を編製するしかありません。また、元の戸籍に戻れる場合でも、復氏した者が新戸籍の編製を申し出た場合も新戸籍を編製することになります。また、子を自分の戸籍に入れたい場合は、新戸籍を作る必要があります。
また、復氏により称する氏は、婚姻直前の氏であり、たとえば、養子縁組などで氏が変わっている場合は、養親の氏に復氏することになります。
夫の両親と養子縁組をしていた妻が離婚し、養子縁組を解消していない場合は、養親の戸籍に入籍するか、養親の氏を称して新戸籍を編成することになります。
なお、婚姻によって氏を改めなかった者については、離婚によって婚姻前の戸籍に復籍する規定はないので、戸籍が変動することはありません。
■婚氏続称と子の戸籍の問題
婚姻によって氏を改めた夫又は妻は離婚によって法律上当然に婚姻前の氏に復することになりますが、離婚の日から3か月以内に、「離婚の際に称していた氏を称する届」をした場合には、離婚の際に称していた氏を使用することができます。これを婚氏続称といいます。
婚氏続称は、届出をすることによってはじめてその効力を生じます。この届出は、離婚した配偶者の同意や承諾を要するものではありませんので、届出をするかどうかは自分の意思で決めることができます。届出は、離婚の届出と同時にすることが多いですが、離婚の日から3か月以内であれば、復氏して一旦婚姻前の戸籍に復籍した場合でも、また、復氏したが復籍せずに新戸籍を編製した場合でも届出をすることができます。
婚氏続称した者が新戸籍を作成した場合で、離婚当時の戸籍にある子を当該新戸籍に入籍するためには、家庭裁判所で子の氏の変更許可を得てから入籍の届出をする必要があります。これは、氏の読み方は同じなのでなぜ変更が必要か不思議と思われるかもしれませんが、法律上は、呼称上の氏と同一ですが、民法上の氏が相違するためです(法律上は復氏することが原則であるため)。
また、3か月経過後に気が変わってやっぱり婚氏を続称したいという場合には、家庭裁判所に対して氏の変更許可申立をするしかありません(3か月以内であれば届出だけで済むのですが、手続としてはかなり面倒になります)。ただし、この場合、氏変更の許可のためには、「やむを得ない事由」が必要とされるので、要件としては厳しく、安易な変更を許さないようになっています。
逆に婚氏続称の手続をとった後に婚姻前の氏(旧姓)に戻したい場合も、家庭裁判所の許可が必要となりますが、この場合は、離婚による復氏が民法上の原則となっていることから、「やむを得ない事由」が通常の氏の変更よりも緩和されて適用される場合があります(判例あり)。
いずれにせよ、復氏するか婚氏続称するかは今後の生活に重大な影響を与えるのと同時に、離婚日から3か月経過後に変更するのはかなり難しくなりますので、離婚時に慎重に判断する必要があります。