不貞行為の相手方に対する慰謝料請求と慰謝料額

■不貞行為の相手方に対する慰謝料請求

 配偶者の不貞行為の相手方に対する慰謝料請求について、判例は、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両社の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫または妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。」として、これを認めています。要するに、不貞の相手方に故意過失がある限り、他方の配偶者に対して慰謝料支払義務を負うということです。故意過失の有無は結婚していることを知らずに交際していた場合などで問題となります。

 慰謝料の額については、慰謝料請求は不法行為に基づく損害賠償請求の一種ですので、当然ながら、違法性や損害の程度によって異なってきます。慰謝料は精神的損害ですので、損害額の算定は、物的損害のような市場価格によるものではありません。もっとも、精神的なものは本来的には当事者にしかわからないものとも言えますが、それでは第三者にすぎない裁判官は判決を書けなくなってしまいますので、内面の傷の程度を外形的、客観的に現れているもので評価していきます。

 具体的には、夫婦の婚姻期間、婚姻関係破綻の有無、程度、婚姻生活の状況、不貞期間、不貞行為の態様・回数・頻度、配偶者と第三者のどちらが主導的役割を果たしたかといった諸事情が考慮され、金額が決定されます。婚姻期間の長さ、不貞行為に及んだ期間の長さ、不貞行為の回数・頻度、婚姻関係破綻の程度が比較的重要な要素と言えます。

■婚姻関係破綻後の不貞行為

 では、婚姻関係が破綻した後に不貞行為があった場合は慰謝料請求はできないのでしょうか。婚姻関係が、破綻した後に一方配偶者と不貞行為に至った相手方の責任について、判例は、「婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情がない限り、不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。」と判断しています。不貞行為が他方の配偶者に対する不法行為となるのは、それが婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益を侵害するからですので、既に破綻していた場合には、原則としてこのような権利や利益があるとはいえないからです。

 また、破綻しているというためには、必ずしも別居をしていることは必要ではありませんが、別居の有無は一つの判断要素となります。ただ、請求を受けた不貞相手が抗弁として、夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたことを主張することがよくありますが、同居している時点で交際が始まっている場合は、破綻の立証が難しい場合が多いと思われます。夫婦の会話もまったくなく(子供を通してやメモなどで意思を伝達している)、寝室も別、食事も別といったいわゆる家庭内別居と呼ばれるような状態になっていれば、同居していても破綻していると言えるでしょう。

 

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この記事を書いた人

弁護士多田大介

代表弁護士 多田 大介

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代表弁護士 多田大介(登録番号31516)