遺産分割の手続について

遺産分割とその手続

■弁護士が関与する相続の手続

 相続が発生し、遺産分割がスムーズに進まない場合、相続に関して、相続人から依頼を受けて弁護士が関与できる手続きは以下のようなものがあります。

1)遺産分割協議(任意交渉)・遺留分減殺請求

 遺産分割割合を定めた遺産分割協議書に相続人全員が署名、押印すれば遺産分割協議が成立します。相続人全員の合意が前提となりますので、一人でも反対する相続人がいれば成立しません。
 協議がまとまれば、遺産分割協議書と印鑑証明書とのセットで、不動産登記などの手続を進めていくことになります。また、銀行預金の名義変更等に必要な書類については予め銀行から必要書類を取り寄せておき、当該書類に各相続人に署名押印してもらうことになります。
 相続人からの依頼があれば、すぐに弁護士が遺産分割協議手続(ないしはその準備)を開始します。
 また、一人の弁護士が複数の相続人から同時に依頼を受けることも可能ですが、その場合は、その相続人間で利害が対立していないことが前提となります。現在は利害が一致していても将来的に利害が対立する可能性がある場合は複数の相続人からの依頼を受けられない場合もあります。

 遺留分減殺請求につきましては、遺産分割協議とはまったく別立てになり、まず、消滅時効を中断させるために、遺留分減殺請求の相手方に対して、遺留分減殺請求の意思を配達証明付内容証明郵便により表明し、その後は、任意の交渉、調停、訴訟という流れになります。遺留分減殺請求については、訴訟になると長期化が予想されますので、調停の段階で決着することが望ましいといえます。

2)遺産分割調停

 遺産分割協議に断固として反対する一部の相続人がいて、任意交渉での協議がまとまらない場合は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。
 調停申立段階から弁護士に依頼することができます。弁護士が依頼を受けた場合、戸籍等謄本などを収集して、相続人調査をするとともに、弁護士照会など使って相続財産調査を行います。生前贈与などの特別受益があるかどうかも調査し、相続財産の全体を把握した上で、家庭裁判所に申立を行います。申立日から1か月ほど後に第1回の調停期日が設けられますが、原則的には、当事者である相続人自身も裁判所に出頭しなくてはなりません。裁判所へは弁護士が同行します。なお、相手方が遠隔地にいる場合でも裁判所のテレビ会議システムを使うことで、遠隔地に出向かずに済む場合があります。
 遺産分割調停は、非公開の手続で、2名の調停委員と裁判官である家事審判官で構成される調停委員会により、話し合いによる合意を目指す手続です。調停の中で、特定の相続人から相続分の譲渡を受けたり、あるいは相続分の放棄をしてもらったりすることも可能ですので、これらの手続により、相続手続に関与したくない相続人は調停手続から脱退することになります。
 ただ、遺産の範囲に争いがあるような場合などでは、調停・審判手続だけでは解決できないこともあります。このようなことが調停中に判明した場合は、一旦調停を取り下げ、別途民事訴訟を提起して遺産の範囲を確定させてから再度、調停を申し立てることになります。
 脱退者を除く相続人全員で合意ができれば、調停が成立し、調停調書が作成されます。調停調書により、不動産の所有権移転登記や、預貯金の名義変更が可能になります。

3)遺産分割審判

 調停で話し合いがまとまらなければ、調停不成立により当然に審判手続に移行します。審判手続は、非公開の手続で家事審判官である裁判官が後見的な立場から裁量により分割方法を定めるものですが、実際には通常の訴訟と同じように当事者が証拠を提出していくことになります。なお、いきなり審判からの申立は原則としてできません。まず、調停で話し合いをしてから、審判に移行する流れとなります。
 審理が尽くされると裁判所が審判を下します。そして、裁判所による審判の告知から2週間で審判が確定することになります。確定した審判により、不動産の所有権移転登記等が可能になります。

4)遺産分割審判に不服がある場合

 家庭裁判所による遺産分割審判に対して不服がある場合は、家庭裁判所の遺産分割審判に対し、不服がある相続人は審判をした家庭裁判所に対して即時抗告の申立てをすることができます。即時抗告は、抗告状を原裁判所(審判をした家庭裁判所)に提出してしなければなりません。抗告審は高等裁判所(大阪の場合は大阪高等裁判所)になります。
 即時抗告の期間は、2週間とされており、その起算日は審判の告知を受けた日の翌日になります。即時抗告申立ての理由は、大別すると、①遺産の評価の問題、②特別受益や寄与分の認定、③分割方法の妥当性等に関してなされることが多いです。
 抗告審の審理の結果、抗告理由が認められない場合には、決定で即時抗告が棄却されます。一方、抗告理由が認められる場合には、抗告審が「自ら審判に代わる裁判」をしなければなりません。これまでは、家事事件における家庭裁判所の高い専門性を考慮し、家庭裁判所に事件を戻すことを原則にしていましたが、家庭裁判所への事件の差戻しは原則としてしないことになりました。
 なお、高等裁判所の判断に対する不服申立(最高裁判所に対する特別抗告、許可抗告)の手続きもありますが、憲法違反や判例違反など申立の要件が限定されているため、事実関係を踏まえた実質的な審理は高等裁判所までで終了します。

 

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