自己破産とは
自己破産とは、借金の返済ができなくなった場合に、裁判所に破産を申し立て、免責許可を受けることによって借金の返済義務を免れる制度です。
収入が減少したり、失業したり、借金の返済額が収入に比べて大きくなったりして、返済を続けることができなくなった場合に利用することができます。
免責許可決定が確定すると、原則として借金を返済する必要がなくなります。ただし、税金や養育費など、法律上免責されない債務もあります。
自己破産の手続には、大きく分けて「同時廃止事件」と「破産管財事件」の2種類があります。どちらの手続になるかによって、必要な費用や手続にかかる期間などが異なります。
同時廃止事件とは
同時廃止事件とは、破産者に換価して債権者に配当するような財産がなく、破産管財人による調査も必要ない場合に行われる手続です。
裁判所が破産手続開始決定と同時に破産手続を廃止するため、破産管財人は選任されません。
借金の主な原因が生活費の不足などで、換価すべき財産もない会社員などの場合は、同時廃止事件として処理されることが多くなっています。
大阪地方裁判所では、同時廃止事件の場合、申立てから免責許可決定まで、おおむね2~3か月程度で進むことが多く、管財事件と比較して費用や時間の負担が少なくなります。
ただし、申立内容に不明な点がある場合などには、追加の説明や資料の提出を求められることがあります。
破産管財事件とは
破産管財事件とは、裁判所が破産管財人(弁護士)を選任し、破産者の財産や借金の状況などを調査する手続です。
破産者に不動産、預貯金、保険の解約返戻金など一定額以上の財産がある場合には、管財事件となります。また、財産が少なくても、免責不許可事由がある場合や、財産の処分状況などについて調査が必要な場合には、管財事件となることがあります。
株式会社などの法人が破産する場合は、破産管財事件となります。また、法人の代表者が個人として自己破産する場合も、管財事件となるのが原則です。
個人事業主についても、事業を継続している場合や、事業に関する財産・負債の調査が必要な場合には、原則として管財事件となります。ただし、すでに廃業して相当期間が経過している場合など、事情によっては同時廃止事件となることもあります。
管財事件では、破産管財人との打ち合わせや債権者集会への出席などが必要となります。
換価すべき財産がなく、債権者への配当も必要ない場合には、異時廃止によって比較的短期間で終了することがあります。一方、不動産の売却や債権の回収、配当手続などが必要な場合には、終了まで6か月以上かかることもあります。
また、管財事件では、弁護士費用とは別に、裁判所に納める破産予納金が必要になります。
大阪地方裁判所における同時廃止事件と管財事件の振分基準
大阪地方裁判所では、申立時に所持する財産の金額などによって、同時廃止事件と管財事件の振分けを行っています。
主な基準は次のとおりです。
- 現金及び普通預貯金の合計額が50万円を超える場合は、原則として管財事件となります。
- 保険の解約返戻金、積立金、敷金・保証金の返戻金、貸付金、退職金、不動産、自動車、過払金などについて、同じ項目の財産の合計額が20万円以上となる場合は、原則として管財事件となります。
例えば、現金と普通預金の合計額が30万円、保険の解約返戻金が15万円、自動車の価値が15万円の場合には、原則として同時廃止事件となります。
各項目が基準額未満であれば、財産の総額が99万円を超えていても直ちに管財事件となるわけではありません。ただし、財産の総額が多額になる場合などには、裁判所の判断で管財事件となることがあります。
また、破産申立前に生命保険を解約したり、財産を売却したりして現金化した場合には、振分基準上、原則として申立時の現預金として取り扱われます。
破産申立費用や必要な生活費、医療費などに使用した場合は、通常、問題となりませんが、財産の処分経緯や使途については裁判所に説明できるようにしておく必要があります。
なお、これらの基準は同時廃止事件と管財事件の振分けを判断するためのものであり、破産者が手元に残すことのできる自由財産の基準とは異なります。
詳しくは「大阪地裁における破産管財事件と同時廃止事件の振分基準」をご覧ください。
住宅ローンのある住宅を所有している場合
住宅ローンを返済中の住宅がある場合は、住宅の現在の価値と住宅ローンの残高が重要になります。
住宅ローンの残高が住宅の価値を大きく上回る、いわゆるオーバーローンの場合には、住宅に換価価値がないものとして、同時廃止事件となる場合があります。
一方、住宅の価値が住宅ローンの残高を上回る場合には、管財事件となり、破産管財人が住宅を売却して、その売却代金を債権者への配当に充てることがあります。
ただし、住宅ローンの有無や住宅の評価額だけで手続が決まるわけではなく、抵当権の設定状況やその他の財産、負債の内容なども考慮されます。
また、住宅を残したい場合には、自己破産ではなく、住宅資金特別条項を利用した個人再生を検討できることもあります。
免責許可とは
自己破産を申し立てただけでは、借金の返済義務がなくなるわけではありません。
裁判所から免責許可決定を受け、その決定が確定することによって、原則として借金の返済義務がなくなります。
個人が自己破産を申し立てた場合には、原則として同時に免責許可の申立てをしたものとみなされます。
ただし、破産法では、一定の事情がある場合には免責を許可しないことができると定められています。これを「免責不許可事由」といいます。
主な免責不許可事由
個人の自己破産で実際に問題となることが多い免責不許可事由には、次のようなものがあります。
1.財産隠しや不当な財産処分
債権者を害する目的で、財産を隠したり、不当に安く売却したり、他人に譲渡したりする行為です。
例えば、預金を隠して申告しなかったり、不動産などを親族に無償で譲渡したりする行為が問題となります。
2.浪費やギャンブル
収入や資産の状況に比べて過大な支出を行い、著しく財産を減少させたり、過大な借金を負担したりした場合です。
例えば、競馬、競艇、パチンコ、オンラインカジノなどのギャンブル、高額な飲食、ブランド品の購入、ゲームへの多額の課金などが問題となります。
ただし、ギャンブルや浪費をしたことがあるだけで、直ちに免責不許可事由となるわけではありません。支出した金額や時期、収入との関係、借金が増えた原因などが考慮されます。
3.クレジットカードのショッピング枠の現金化
クレジットカードで商品などを購入し、これを安い価格で売却して現金を得る行為です。
新幹線の回数券や商品券などを購入して換金する方法が典型的な例です。最近では、買取業者などを利用したショッピング枠の現金化も問題となります。
破産手続開始を遅らせる目的で、信用取引により商品を購入し、著しく不利益な条件で処分する行為は免責不許可事由となります。
そのため、現金化の時期や目的、取引内容などが問題となります。
4.返済できない状態での不正な借入れ
すでに借金を返済できない状態であるにもかかわらず、財産状況について嘘をつくなどして、新たに借入れをする行為です。
破産手続開始申立ての1年前から破産手続開始決定までの間に、破産原因となる事実がないと信用させるために詐術を用いて信用取引により財産を取得した場合は、免責不許可事由となります。
単に返済が困難な状態で借入れをしたというだけでなく、借入れの際の説明や取引の経緯などが問題となります。
5.特定の債権者への不当な返済
借金の返済ができなくなった後に、特定の債権者だけに返済する行為が問題となる場合があります。
例えば、ほかの債権者には返済していないのに、親族や知人からの借金だけを優先して返済するような場合です。
もっとも、すべての偏った返済が直ちに免責不許可事由となるわけではなく、返済の目的や方法などによって判断されます。
6.過去7年以内の免責許可
以前に自己破産をして免責許可決定を受け、その決定が確定した日から7年以内に再び免責許可の申立てをした場合には、免責不許可事由となります。
ただし、この場合でも、事情によっては裁量免責が認められる可能性があります。
7.裁判所や破産管財人への虚偽の説明、調査への非協力
裁判所や破産管財人から説明を求められた際に、虚偽の説明をしたり、必要な説明を拒んだりする行為です。
財産や借金の内容を正確に申告せず、必要な資料の提出にも応じない場合には、免責の判断に重大な影響を及ぼすことがあります。
免責不許可事由があっても裁量免責が認められる場合がある
免責不許可事由がある場合でも、必ず免責が認められなくなるわけではありません。
破産法252条2項では、破産に至った経緯やその他の事情を考慮して、裁判所が相当と認める場合には免責を許可することができると定められています。これを「裁量免責」といいます。
実務上も、ギャンブルや浪費などの免責不許可事由があったとしても、裁量免責が認められるケースは多くあります。
裁判所は、問題となる行為の内容や程度、借金が増えた経緯、本人の反省、現在の生活状況、今後の生活再建に向けた取組みなどを総合的に考慮して判断します。
また、大阪地方裁判所では、免責不許可事由の内容や程度に応じて、反省文や生活再建策の提出を求められたり、本人が裁判所に呼び出されて事情を聴かれたりする場合があります。
ただし、免責不許可事由が重大である場合や、裁判所・破産管財人の調査に協力しない場合などには、免責が許可されない可能性もあります。
特に、財産や借金の内容について虚偽の申告をしたり、必要な資料を提出せず調査に協力しなかったりすることは、免責の判断に大きく影響します。
免責不許可事由がある場合でも、その事実を隠さず、借金の原因を正確に説明し、生活再建に向けて取り組むことが重要です。
詳しくは「免責不許可事由がある場合の取扱いについて」をご覧ください。
自己破産を検討されている方へ
自己破産は、借金の返済ができなくなった方が、経済的な生活を立て直すための制度です。
自己破産をすると、一定の財産を処分する必要がある場合もありますが、すべての財産を失うわけではありません。また、ギャンブルや浪費による借金がある場合でも、事情によっては免責が認められます。
どのような手続になるか、免責が認められる見込みがあるかは、財産や負債の内容、借金が増えた経緯などによって異なります。
当事務所では、自己破産に関する初回30分の法律相談を無料で行っています。借金の返済が難しくなった場合には、お早めにご相談ください。
