破産管財事件と同時廃止事件の振分基準について

■破産管財事件と同時廃止事件

 破産事件には、裁判所から破産管財人が選任される破産管財事件と、破産手続開始の決定と同時に破産手続の廃止を決定する同時廃止事件との2種類があります。
 破産管財事件になると、管財人との打ち合わせや裁判所への出頭、郵便物の転送、終結まで時間がかかる、破産予納金がかかる等、破産者にとっては非常に負担が大きいものです。
 そこで、どのような場合に管財事件となり、同時廃止事件となるのかは破産者にとって関心が大きいものと思われます。大阪地方裁判所では平成29年10月1日付けでこの点に関する運用が変更されていますので、以下ご説明致します。

■振り分けの基準

 破産管財事件と同時廃止事件との手続選択については、一定の換価すべき財産が見込まれる場合は破産管財事件となります。すなわち、大阪地方裁判所では、同時廃止事件の申立書及びその添付書類において、所持する現金及び普通預貯金の合計額が50万円を超えると認められる場合、または現金等以外の12項目の個別財産(保険の解約返戻金、積立金等、賃借保証金・敷金の返戻金、貸付金・求償金等、退職金、不動産、自動車、上記以外の動産、上記以外の財産、近日中に取得することが見込まれる財産、過払金)について項目ごとの合計額が20万円以上となる項目がひとつでもあると認められる場合には、破産管財事件となります。
 つまり、現預金の合計額が50万円までで、各個別財産の価値が20万円未満であれば、原則として同時廃止事件となります。各個別財産の価値が20万円未満であれば、現預金との合計で99万円を超えていても原則として同時廃止事件となりますが、総額が大きくなれば、管財人による資産調査が必要と判断されて、管財事件に移行する場合もあります。従前の大阪地裁の運用基準であった、2つの枠で判断する「ダブルスタンダード」はなくなりました。

■財産の直前現金化

 同時廃止事件と破産管財事件との振分基準上は、実質的危機時期以降に個別財産を換価して(例えば生命保険を解約して解約金を受け取った場合など)破産手続開始の申立て時には現預金として所持していたとしても、換価前の個別財産とみなす運用とはなっていません。また、過払金についても同様に申立て時に過払金が回収済みである場合には、実質的危機時期以降に回収して現預金になったものであっても、あくまで現預金として取り扱うことになります。
 このように個別財産を換価して現金化している場合は、単純に現預金としてみればよく、個別財産の20万円の枠内かどうかということを考慮する必要はなくなりました。

■現預金を有用の資に使う場合 

 現預金の場合、個別財産を現金化した後に、破産申立までに使ってしまい減ってしまうこともよくあると思いますが、いわゆる有用の資(申立費用や予納金、生活費、医療費、転居費用、葬儀費用、学費、税金など)に使った場合であれば、裁判所は特別問題とはしません。ただ、何に使ったかある程度証明できるようにしておく必要があります。領収書を取っておくことは当然のこと、生活費に使った場合であれば、家計簿等で使い途を裁判所に説明できるようにしておくべきです。現金が入ったからといって浪費的に使ってしまうことは言語同断ですし、使い途を裁判所に説明できない場合は裁判所に対する心証が著しく悪くなりますので注意して下さい。

 

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この記事を書いた人

弁護士多田大介

代表弁護士 多田 大介

依頼者との信頼関係を第一に考え、信頼関係に基づき、迅速なサービスを提供致します。おかげさまで大阪弁護士会に弁護士登録して今年で17年目です。趣味はSFやホラーなどの海外ドラマを見たり、歴史の本を読むことです。
代表弁護士 多田大介(登録番号31516)