会社が税金・社会保険料を滞納したらどうなる?差押えの時期と会社破産への影響を弁護士が解説

会社の資金繰りが悪化し、消費税や法人税、社会保険料を支払えなくなることがあります。
税金や社会保険料を滞納すると、税務署や年金事務所などから督促を受け、最終的には会社の預金や売掛金を差し押さえられる可能性があります。
もっとも、滞納したからといって直ちに差押えが行われるわけではありません。分割納付や納付の猶予を相談できる場合もあります。
この記事では、会社が税金や社会保険料を支払えなくなった場合の対応、差押えの仕組み、会社破産との関係について解説します。

1 公租公課とは何か

公租公課とは、国や地方公共団体などに納付する税金や公的な負担金の総称です。
会社に関係する主な公租公課には、次のものがあります。
税金関係

  • 法人税
  • 消費税・地方消費税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 源泉所得税
  • 固定資産税

社会保険料など

  • 厚生年金保険料
  • 健康保険料
  • 労働保険料(労災保険料・雇用保険料)

これらはすべて同じ法律で徴収されるわけではありませんが、滞納すると、法律に基づいて財産の差押えなどが行われる点では共通しています。
特に消費税や社会保険料は、会社の資金繰りが悪化した際に滞納が生じやすい項目です。

2 税金を滞納すると、いつ差押えが来るのか

税金を納期限までに納付しない場合、通常は次のような流れになります。

  1. 納期限を過ぎる
  2. 税務署などから督促状が届く
  3. 電話や書面による納付の催告、財産調査などが行われる
  4. 預金や売掛金などが差し押さえられる

国税の場合、法律上は、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しなければ、差押えの対象になります。
ただし、10日を過ぎたら必ず直ちに差し押さえられるわけではありません。
実際の差押えの時期は、滞納額、滞納期間、会社の財産状況、納付に関する相談状況などによって異なります。
重要なのは、督促状が届いてから長期間の猶予が必ず与えられるわけではないということです。

3 税務署は会社の預金口座を常に監視しているのか

税務署がすべての会社の銀行口座をリアルタイムで常時監視しているわけではありません。
もっとも、税金の滞納が続いている会社については、税務署などが金融機関に照会し、預金口座の有無や残高を調査することがあります。
そのため、会社が税務署に口座情報を知らせていなくても、取引口座を把握される可能性があります。
また、税務署は裁判所で判決を取得しなくても、法律に基づいて預金を差し押さえることができます。
銀行口座が差し押さえられると、差押えの対象となった預金を自由に使えなくなり、従業員の給与や仕入代金などの支払に影響することがあります。

4 売上金が入金されるタイミングを狙って差し押さえられることはあるのか

売上金の入金時期に合わせて預金口座が差し押さえられる可能性はあります。
税務署などは、会社の財産調査によって取引先や銀行口座を把握することがあります。また、売掛金自体を差し押さえることも可能です。
そのため、例えば月末に多額の売上金が入金される会社では、その入金時期を踏まえて差押えが実施されることも考えられます。
ただし、税務署が会社の銀行口座への入出金を常にリアルタイムで把握しているわけではありません。
預金差押えは、原則として差押えの効力が生じた時点の預金債権を対象とします。差押え後に新たに入金された預金まで、当然にすべて差押えの対象になるわけではありません。
なお、売掛金そのものが差し押さえられた場合には、取引先から会社への支払が制限されるため、会社の資金繰りに重大な影響が生じる可能性があります。

5 税金や社会保険料の分割納付は相談できるのか

税金や社会保険料を一括して納付できない場合、税務署、地方自治体、年金事務所などに分割納付や猶予を相談することができます。
国税には、一定の要件のもとで認められる「換価の猶予」や「納税の猶予」という制度があります。
換価の猶予が認められると、原則として1年以内の期間で納付が猶予され、分割納付が認められる場合があります。また、差押えや財産の売却が猶予され、延滞税が軽減されることもあります。
厚生年金保険料などについても、年金事務所に分割納付や猶予の相談が可能です。
ただし、分割納付は無条件に認められるものではありません。会社の売上、経費、預金残高、今後の収支見込みなどを確認した上で判断されます。
また、単に分割納付の相談をしただけで、法律上当然に差押えが禁止されるわけでもありません。
税金を支払えない見込みが立った時点で、早めに担当窓口へ相談することが重要です。

6 会社の資金が足りない場合、税金と銀行返済のどちらを優先すべきか

会社の資金が不足すると、税金、銀行返済、仕入代金、給与など、どの支払を優先するかという問題が生じます。
税金や社会保険料は、滞納すると預金や売掛金を差し押さえられる可能性があるため、特に注意が必要です。
一方、銀行借入れの場合、通常は返済を延滞しただけで直ちに預金や財産を強制執行できるとは限りません。ただし、預金との相殺などが問題になることはあります。
したがって、銀行返済を続けるために税金の滞納を長期間放置することが適切とは限りません。
もっとも、会社破産を検討している段階では、税金だけを優先して支払うことにも慎重な判断が必要です。
破産が避けられない状況では、残っている会社財産を適切に管理し、破産申立費用などを確保する必要があります。
支払の優先順位を経営者だけで判断せず、弁護士に相談することが望ましいでしょう。

7 税金や社会保険料を滞納していても会社破産はできるのか

税金や社会保険料を滞納していても、会社の破産申立ては可能です。
税金が残っていることを理由に、会社の破産申立てが認められなくなるわけではありません。
破産手続が開始されると、会社の財産は原則として破産管財人が管理し、法律に従って債権者への弁済や配当が行われます。
税金や社会保険料についても、破産手続の中で処理されます。
ただし、税金や社会保険料は、一般の借入金や買掛金とは異なる優先的な取扱いを受けることがあります。

8 会社破産では滞納した税金はどのように扱われるのか

破産手続における税金の取扱いは、納期限などによって異なります。
主に次の2つに区分されます。
① 財団債権
破産手続開始時点で、まだ納期限が到来していない税金や、原則として納期限から1年を経過していない税金などは、財団債権となります。
財団債権は、一般の破産債権に優先し、破産手続によらず随時弁済される債権です。
② 優先的破産債権
破産手続開始時点で納期限から1年を経過している税金などは、原則として優先的破産債権となります。
優先的破産債権は、一般の破産債権に優先しますが、破産手続に従って配当を受けることになります。
なお、延滞税や加算税などについては、別途取扱いを検討する必要があります。
会社の財産が不足している場合には、税金や社会保険料についても全額が回収されないことがあります。

9 会社破産をすれば税金の差押えは止まるのか

破産手続開始決定後は、原則として、破産財団に属する財産に対して新たな税金の滞納処分を行うことはできません。
ただし、破産手続開始決定より前に既に差押えが行われていた場合には、破産手続開始後も、その滞納処分を続行できる場合があります。
したがって、破産申立てをしただけで差押えが当然に止まるわけではありません。
税金の差押えが差し迫っている場合には、申立ての時期や会社財産の管理について、早急に検討する必要があります。

10 会社を破産させた場合、滞納した税金を代表者が支払う必要はあるのか

株式会社などの法人が滞納した税金は、原則として会社自身の債務です。
そのため、会社が破産したからといって、代表取締役が当然にその税金を個人で支払う義務を負うわけではありません。
これは、消費税や源泉所得税についても基本的に同様です。
ただし、会社財産を代表者に不当に移転した場合など、例外的に個人の納税義務が生じることがあります。

11 税金を支払えず、会社の経営が続けられない場合は

税金や社会保険料を一時的に支払えなくなっただけで、直ちに会社を破産させる必要があるわけではありません。
今後の売上や資金調達によって経営を立て直せる見込みがあるのであれば、税務署や年金事務所と相談し、分割納付などによって事業継続を図る方法が考えられます。
しかし、売上が減少し、銀行返済や仕入代金の支払も難しくなっている場合には、会社破産を検討する必要があります。
特に注意したいのは、税金の差押えによって会社の預金が失われると、破産申立てに必要な費用を準備できなくなる可能性があることです。
税金の滞納が続き、事業継続の見通しが立たない場合には、差押えを受ける前に弁護士へ相談することをおすすめします。

まとめ

会社が税金や社会保険料を滞納しても、直ちに差押えが行われるとは限りません。分割納付や猶予を相談できる場合もあります。
しかし、督促状が届いた後は、法律上、比較的早い段階で財産が差し押さえられる可能性があります。
また、会社破産をすれば、税金や社会保険料も破産手続の中で処理されますが、破産申立て前に差し押さえられた財産については注意が必要です。
税金の滞納が続いている場合には、経営を継続できるのか、会社破産を選択すべきなのかを早めに判断することが重要です。

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この記事を書いた人

弁護士多田大介

代表弁護士 多田 大介

依頼者との信頼関係を第一に考え、信頼関係に基づき、迅速なサービスを提供致します。おかげさまで大阪弁護士会に弁護士登録して20年が過ぎました。趣味はSFやホラーなどの海外ドラマを見たり、歴史の本を読むことです。
代表弁護士 多田大介(登録番号31516)