債務整理手続選択の基準について説明いたします。
ただし、あくまでも基準にすぎず、債務者の個別的事情などを考慮して、債務者が弁護士と相談したうえで、最も適切と思われる手続を選択することになります。

①債務総額

債務総額が多額の場合(収入にもよりますが、経験上、300万円超が一応の目安)は個人再生や自己破産を選択することになります。債務総額が多額の場合、任意整理を選択すると、毎月の返済額が多くなり長期にわたって返済していくことが難しくなります。分割回数については60回(5年払い)が限度である会社が多く、1回あたりの支払額を下げるにも限界があります。

②毎月の収入

毎月の収入がまったくない場合あるいは毎月の収入があっても分割弁済の原資を用意できない場合(毎月の手取り収入から生活費を引いてお金が残らない場合)は、任意整理及び個人再生は選択できず、自己破産を選択することになります。
なお、任意整理でギリギリ返していける程度のお金しか残らない場合は自己破産をおすすめします。任意整理には3年から5年かかり、その間に突発的なお金の入り用が発生した場合に対応できないからです。

③自己所有の住宅を残したい場合

自己破産の場合は住宅を処分することが前提となります。破産管財手続や競売で親族などにお金を出して買い取ってもらえば、住宅の維持(住み続けること)はできますが、所有権は親族などの名義になり、あまり意味がないでしょう。
任意整理であれば、住宅ローン債権者以外の債権者のみを手続の対象とすることができますので、住宅ローンを継続して支払っている限り、住宅を残すことができます(住宅ローンの滞納がないことが前提となります)。
個人再生では、住宅資金特別条項を利用した手続により、住宅を残すことができます。ただし、特別条項の適用要件が決まっていますので、適用可能か調査・検討する必要があります。弁済額との関係で住宅の価額を調査する必要があります。

④ローン残のある所有権留保付自動車を継続して使用したい場合

ローンが残っており、かつ所有権留保がなされている自動車(車検証の所有者がローン会社になっている自動車)については、破産及び個人再生を選択する限り、通常は所有権者であるローン会社が自動車を引き上げますので、債務者が継続して使用することはできません。
この場合は、任意整理を選択し、ローン会社を手続の対象外として、ローンを支払いつつ、使用を継続することになります。

⑤現在の職業を続けたい場合

自己破産では、保険の外務員警備員など一部の職業について欠格事由(破産開始決定とともに失職します)となっており(ただ、免責決定確定後には復権が認められますので、欠格となる期間は数ヶ月程度です。一生その仕事ができないわけではありません)、また、自己破産の場合、個人事業者は原則として現在の事業を継続することができませんので、これらの職業を手続開始後も続けたい場合には選択できません。もっとも、手続中はアルバイトなどで生活費を稼ぎ、手続終了後に新たに別の事業として再開することはできます。
通常の会社員アルバイトなどの場合は自己破産しても失職するわけではありません。手続中も問題なく就労できます。
任意整理個人再生では、職業について制限はありませんので、現在の職業を続けたい場合は、これらの手続を選択することになります。

⑥保証人に迷惑をかけたくない場合

破産及び個人再生では、債務免責の効果は保証人には及びませんので、債権者は保証人に対して、責任を追及することになり、保証人が負担を負うことになります。
任意整理であれば、債務者が債権者との合意内容に従った返済を行っているかぎり、保証人が責任を追及されることはありません。
したがって、保証人に迷惑をかけたくない場合は任意整理を選択することになります。

⑦免責不許可事由がある場合

自己破産には、破産に至った原因が浪費などの場合や一部の債権者にのみ不公平な返済をしていた場合などについて免責不許可事由が定められていますので、これらの場合に該当すれば免責(法的に借金返済義務がなくなること)が受けられない場合があります。
ただし、免責不許可事由の程度によっては、裁判所の裁量による免責が認められることがありますので、免責不許可事由の程度が重大でない場合は自己破産も選択可能です。
任意整理及び個人再生においては、免責不許可事由といった定めはありませんので、これらの手続は選択することができます。